松田事務所の荒木です。前回は「自計化」(お客さんが、領収書や請求書などの書類をもとにパソコンを使って、自社で会計ソフトに必要なデータを入力し、財務状況を把握すること)について書きましたが、「自分とこで領収書や請求書から伝票作ったり、会計ソフトへの入力したりするんやったら、税理士事務所って一体何してくれるとこなん?」と疑問に思われるかもしれません。
そもそも税理士の仕事って何なのか?これは僕自身常に考えていることでもあります。昔、大学院で税法の勉強をしていた時は、法の目をかいくぐった節税スキームができれば、それがお客さんのためになる、それを提供できるのがいい税理士だと思っていました。つまりは、「法律に違反していないしいいやん!」という考え方です。しかし、この事務所に入って、所長の松田の日々の言動や、書籍や研修においてTKC創始者の飯塚毅氏の教えに触れるにしたがって、「法律に違反していないしいいやん!」が少しずつ変化してきました。今は、たとえ法律には違反していなくても、それを行う意図が、単に税負担の軽減を図りたいというとこにあるならば、税理士として勧めるべきではないという風に思っています。
では、どうして法律に違反してなくてもダメなのか。その理由を「ああ、なるほど!」と思えるレベルで述べるのはかなり難しいのですが、数学の「独立研究者」である森田真生氏が語っていたことが分かりやすいかなと思います。↓↓↓
・・・20年間無敗だった伝説を持つ雀士・桜井章一さんの本を読んだら、「負い目をなくす」ということが書いてあるんです。道傍にゴミが落ちていることに気づいたのに拾わないとか。お年寄りが立っているのに電車で席を譲らないとか。そういうちょっとしたことが自分の心の中に「負い目」をつくっていく。その負い目が、肝心なときの流れを逃してしまうんです・・・ |
つまり、「法律に違反していないしいいやん!」は、知らず知らずのうちに自分自身の中に「負い目」をつくってしまうことになり、その結果、運を逃すことになってしまうということです。税負担の軽減を図ることで得をしているように思えるかもしれませんが、長い目で見た場合には色々なチャンスを逃してしまっており、結果的にマイナスに働いているということになります。ですから、やらないに越したことはありません。
ということで、税理士の仕事が、税法を熟知して節税スキームを提供するということではなく、ましてや領収書や請求書から伝票を作成したり、会計ソフトへ入力したりすることでもないとしたら、税理士事務所としての役割って一体何でしょうか。
そこで、僕が今現在思っている税理士事務所としての役割(税務申告や税務相談等は当たり前なので置いておいたとして)はと言いますと、大きく2つあります。まず1つ目が、月次巡回監査等によって、「見られている」という適度な緊張感を常に持ってもらえる存在になること。人の心というのは弱いものです。ついつい魔がさして誘惑に負けそうになる時もあるかもしれません。そんな時に「あかん、あかん。次の監査の時に『これ何です?』って絶対聞かれるわ」と気を引き締め直したり、「こんなんしてたら『経営理念から外れてません?』って突っ込まれかねへんしやめとこ」と思い留まったりといったような、ちょっとした心の防波堤となる役割です。
そして、2つ目が社長の親身の相談相手としての役割です。相談相手というとおこがましいので、話し相手、もっと言えば聞き役です。経営していると、大小様々な悩みが次から次へと出てくるものだと思います。でも、それをどう乗り越えていくかの答えは社長の中にしかありません。僕達が社長の話しを聞くうちに、社長の中で考えがまとまったり、「やっぱりそうか」と確信を深めたり、「これって前に思ってたあの事と同じことかも」と気付いたり、「うじうじ悩んでても仕方ないな」と思い直したり、といったようなことで、社長の心の中をほんの少しでも軽くできるような存在になることです。
また、「親身の」というところもポイントとなります。「親身の」ということは、家族のことのように思ってということです。お客さんのことを家族のことのように思えるということは、常日頃から自分自身の家族を大切にしているということの延長線上にしかあり得ないと思います。その点、松田事務所のメンバーは皆家族をとても大切にしています。大切にする仕方は人それぞれですが、家族を思う気持ちが溢れています。
この2つの役割は、税理士事務所が担っている役割っていうのはこういう事であればいいなぁと、僕が勝手に思っているものに過ぎませんが、松田事務所のすごいとこ(思いっきり手前味噌ですが)は、その土台が既にできているというとこです。こんな税理士事務所はちょっと他には無いんちゃうかなぁと思います。(多分・・・)