M-Times 2021.4

荒木家のコロナの話3 ~コロナが近くにやって来た~ 2021.4

 監査部の荒木です。色々ありましたが、1月にとりあえず小学校のお受験が終わり、ようやく日常が戻ってきました。2月の下旬には3年間の幼稚園生活での集大成でもある「音楽祭」があります。年長のクラスは、歌、鍵盤ハーモニカ演奏、そして鼓笛隊と3つを行います。特に鼓笛隊は太鼓(大太鼓、中太鼓、小太鼓に分かれる)を叩きながら隊列を組み、リズムに合わせて足踏みしながら舞台の上を色々なフォーメーション(十字回転等)で動き回るというかなり難度の高いもので、昨年や一昨年の音楽祭で年長さんの鼓笛隊を見た時は、うちの子がこれをできるようになるのかと内心ビビったものです。

 2月に入り、いよいよ音楽祭に向けてラストスパートとなる矢先に事件が起きました。園児の1人にコロナの陽性者が出たのです。幼稚園は即日に休園となり、その数日後には、保健所の指導でPCR検査が行われました。うちの子もPCR検査を受ける事になりましたが、濃厚接触者ではなく念のためのPCR検査ですという案内がありましたので、ほぉほぉこれが噂のPCR検査というやつか、くらいの軽いノリで検査を受けてました。(と、思っていたのは僕だけかもしれませんが・・・)

 その夜、検査結果は翌日には出るという事と、陰性なら幼稚園から、陽性なら保健所から連絡が入るというお知らせが幼稚園から届きました。検査自体は軽い感じで受けていたものの、やはり結果がちゃんと出るまでは何処か落ち着かず、携帯が鳴る度に「どっちからの電話や」とビビりました。

 そうこうしているうちに無事幼稚園の方から連絡が来て、ホッとしました。が、今回のPCR検査で陽性者が他に4名出たという事も分かりましたので、完全に安心する事もできなくなりました。子供が二次感染している可能性も出てきたのです。この日に開催された家族会議で決めた事は、僕も家で一緒に14日間の自宅待機をする(実家やホテル等に避難しない)という事と、数日間空けて再度子供にPCR検査をするという事です。1回目で陰性となった場合は、幼稚園や保健所からは求められないという事もあって、複数回PCR検査をやるというような家庭はほぼありませんでした(僕の知ってる限りですが・・・)が、僕が14日間の自宅待機経過後にすぐ動けるように段取りを組むためには、二次感染もしていないという事を早めに知っておく必要があるため、うちはやる事にしました。(余談ですが、僕自身も自宅待機するという事を一切の迷いもなく決断できたのは、普段から「今は非常時だ!」として在宅勤務できる体制を事務所が取っていた事が大きかったです。)

 この時点でも、新たな4名の陽性者がどのクラスから出たかの情報等は一切出てきませんでしたが、翌日、いつも一緒に遊んでいる同じクラスの友達の親から「PCR検査で子供が陽性となった。もし迷惑をかけるような事になったらごめんなさい」という連絡が回ってきました。これでうちの子が二次感染している可能性がグーンと跳ね上がりました。というか、もしうちの子が感染していたとしたら、妻や僕も感染している可能性大となります。子供は感染していても無症状か軽症で済むようなのでまだいいのですが、自分達が感染した場合はどんな苦しみや後遺症が待っているのか、入院となったら子供はどうなるのか、仕事はどうなるのか・・・等、とにかく頭の中が不安と恐怖でいっぱいいっぱいになりました。ですから2回目のPCR検査で陰性と分かった時は、家族3人声を揃えて「やったー!」の絶叫でした。

 その後の情報で、陽性となった4名の園児の家族に行ったPCR検査の結果も、全員が陰性だったことが分かりました。これで、待機期間が経過するまでの残りの数日間は、単に「念のため」の意味が強くなり、自分も感染してるかもと思いながら過ごす日々と比べると、精神的にはかなり楽でした。(早く通常通り仕事がしたいと気持ちは焦ってましたが・・・)

 そして迎えた音楽祭の当日、鼓笛隊の演奏が始まる前に園長先生のお話がありました。「自宅待機期間が明けて練習が再開された最初の日の朝、いつものように太鼓を叩く音が聞こえてきました。今まで長年色々な太鼓の音を聞いてきましたが、こんなに気迫がこもった太鼓の音は初めてでした。今年の年長さんの練習時間は例年の3分の1しかありませんでしたが、それを全く感じさせない仕上がりになっています」と。

 実際その通りの素晴らしい演奏でした。子供達からは「この一瞬を無駄にしない!」みたいな何かすごい真剣さやエネルギーのようなものが溢れ出しており、涙なしでは見れませんでした。音楽祭前に、突然コロナという災難に見舞われたわけですが、時間というものには「長さ」だけじゃなく「濃さ」もあるのだという事を、身をもって知ることができたのは子供たちにとってとても大きな財産になったような気がします。