M-Times 2021.6

親孝行スパルタ式 2021.6

 総務部の石田です。母の日を翌月に控えた4月、松田事務所の月例会議では、松田所長より職員全員に「親孝行代」が支給されます。これは所長の私費でもって下さるもので、文字通り「よくよく親孝行せよ」という下知のもと、一同ありがたや~~っと一斉に平伏して拝受します。(というイメージです)

 我が家の今年の使い道については、計画がありました。ちなみに夫の両親と私の父は既に他界しており、母一択の全振りです。その母に初めてのスマホを買い与えるというものです。

 母は昭和22年生まれ74歳、今時、後期高齢者でもない70台前半なんて、お年寄りとは呼べないかもしれません。しかし物心ついた時からスマホがある子供と違い、未だにATMのタッチパネルで指が泳ぐような人に、初老に足を踏み入れた私が指導するというのが、想像しただけで「面倒臭い・・・!」ので、ずっと目を背けてきたのですが、時は至れり、有難く頂戴した「親孝行代」を握りしめ、いざ某○○ショップへ。

 ここからトラブルが続きます。計画では1日ですべて終わらせるつもりで、事前に××の取扱いがある○○店に連絡し「私が持ってるのと同じ××の機種の在庫があるか?いつ入荷するか?」の確認と「それを1台取り置きしてほしい」と約束し、来店時間を伝えて予約を取っていたにも関わらず、いざ対面すると肝心の機種が「無い」・・・なんやて!?

 とんとん拍子で終わるつもりだったので、その後のスケジュールも色々組んでおり「おんどりゃ~」とゴネる時間的余裕は無く、しれっと○○系の機種を勧めてくる店員の言葉を遮り、ガラケーからのMNP(※○○と契約していた電話番号を、フリーエージェント化する手続き)だけ急かして、その店を飛び出ました。

 私が××の機種にこだわるのは、正に私が使っているからです。母とは同居してませんので、今後電話やLINEなどで何度も私にSOSを出して来ることでしょう。その時に、他機種であったり、違う通信会社だと色々訊かれても「わからん!!」のです。目の前にあれば、ある程度androidスマホ共通の操作であれば教えられるのですが、目隠し状態で、専門用語の共有出来ない相手に伝える術など・・・・ぐぁ~面倒臭い!!

 取り急ぎ××取扱い店をスマホで再検索。近場は直接足を運び、「在庫なし」の返事に落胆、また検索。一番手間取ったのは、直通の番号が載ってないこと。(←サポセン扱い回避のため?)おかげで、そのショップのあるデパートや電気店などの代表電話にかけては、いちいち携帯売り場の店員を呼び出してもらう、というまだるっこしい方法しかありません。

 「もう、今度でいいよぉ」と背後でボヤく母を(よくねえよ)一喝しながら、何店目かの問い合わせでようやく「在庫あり」の返答が!―――歓喜も束の間、電話口の担当から注意点「身分証明書は、健康保険証のみの場合、別途住民票が要る」とのこと。普通はそこまで要りません。再び急転直下です。時間はもう既に17時前、今から市役所に取りに行けというの!?絶望・・・ってアレ??

 ちょうど、今立っている場所からその店への方向に、正に市役所がドーンとそそり立ってるじゃないですか。急ぎ、市役所へ電話をし、閉館は17:15と知るや、間に合う!!走るで、母ちゃん!!!―――というドタバタの後、無事に同じ機種&契約のスマホを手に入れました。他社乗り換えによるボーナスで安くあがったこともあり、その夜はちょっと贅沢な夕食に舌鼓。老人を一日引きずり回した慰労も兼ねて、存分に親孝行させて頂きました。

 実家へ帰宅、スマホ最初の設定は、ほぼ私の独断と偏見で再構築。余計なアプリを片っ端から削除。ガラケー時代の電話帳から手動で電話番号登録。(←友達少ない母で助かった)親戚にはLINEを繋げていきます。私の渾身の使い方説明にはテンション低く「はぁ。へぇ。ほぉ」しか返ってきませんが、致し方ない。お互い疲労がピークです。

 一晩泊まって、翌昼過ぎまで惰眠を貪る私をゆり起こして、母がノートを見せてきます。「これが分からないの」そこには、謎の5角形や虫メガネや渦巻きマークを手書きしたものが・・・そう、スマホのアイコンの数々なのです。そうか。そこからなのか・・・。改めて、絵本の犬を指してワンワン、の域から出発するんだなぁと思うと、面倒臭いながらも、愛しい心地がしました。ひとつひとつ、説明を手書きで足してあげました。

 5月に誕生予定だった従妹の赤ちゃん(母にとっては又甥)が、早産で生まれ、LINEには次々と可愛い動画が送られて来ています。先週、スマホが訳わからん事になってるので見に来てくれと頼まれ、メンテをしてあげたのですが、その傍らで「でも、触ってるとだいぶ分かってきたんよ」と偉そうに言う母が、やたら楽しげで、ホッとしています。